「若年性脳梗塞」に関連して、私たち現代人は「若年性認知症」につての理解と予防の必要性を認識する必要があります。

若年性認知症

今まで認知症を発症する人のほとんどは65歳以上でした。しかし、そうでない65歳未満の人が発症する認知症を「若年性認知症」と呼んでいます。「若年性脳梗塞」ということばもあることなどから、現代人は老化スピードが速くなっているともみることができます。その大きな要因は、私たちの生活環境の激変によるライフスタイルの変化によるものであると考えられます。

日本の認知症患者数は462万人と推定され、そのうち血管性認知症は約92万人(約20%)であり、認知症の代表的疾患であるアルツハイマー型認知症と比較すると、血管性認知症は男性に多いと報告されています。

血管性認知症(Vascular Dementia: VD)とは、脳卒中(脳血管障害:脳梗塞・脳出血・くも膜下出血)によって脳内の神経組織が破壊され、そのことが要因となって現れる認知症のことを指します。単なる動脈硬化ではなく、脳血管障害により急性もしくは慢性の脳虚血により脳機能が低下することで認知症を来たすようになるという考え方となります。

 

【現況】

日本医療研究開発機構(AMED)認知症研究開発事業による若年性認知症実態調査の「日本の若年性認知症の有病率と有病者数」(2017年度~2019年度調査)によると、全国における18歳~64歳の若年性認知症者数は3万5,700人、人口10万人当たり50.9人と推計されています。

厚生労働科学研究費補助金(長寿科学総合研究推進事業)「若年性認知症の実態と対応の基盤整備に関する研究」(2006年度~2008年度調査)によると、若年性認知症の原因疾患には、血管性認知症(39.8%)、アルツハイマー病(25.4%)、頭部外傷後遺症(7.7%)、前頭側頭葉変性症(3.7%)、アルコール性認知症(3.5%)、レビー小体型認知症(3.0%)などがあります。


【特徴】

「若年性認知症」の発症は、まだ現役でバリバリ働き盛りの世代のため、病気によって働けなくなってしまうと家族が経済的に困窮してしまうケースが多いことが特徴です。そのため、厚生労働省を中心に「若年性認知症コールセンター」の設置や支援コーディネーターの配置、雇用継続や就労の支援などさまざまな施策が行われています。

 

【差異】

若年性認知症は、発症年齢の若さから高齢者(65歳以上)とは異なる問題が起きます。

①若年性認知症は名称の如く発症年齢が若い
 発症平均年齢は51.3歳(厚生労働省「若年性認知症支援ガイドブック」より)

②高齢者の認知症は女性に多く、若年性認知症は男性に多い

③高齢者の認知症の場合はアルツハイマー型認知症が全体の約7割を占める。若年性認知症の場合は血管性認知症が全体の約4割で最も多い

④若年性認知症は働き盛り世代でなる人が多いため一家の大黒柱が働けなくなってしまったり、配偶者が介護にあたることで(共稼ぎの場合は)配偶者の収入が減収するといった家族が経済的に困窮してしまうケースが多くなりがちです。
そして、多くの配偶者が子育てや家事、仕事に加えて介護を一手に担うことになり、親の介護と配偶者の介護が重なってしまうといったケースもあります。

上の違いについてですが、②多い少ないというのはあまり関係がないと思われます。女性のほうが平均寿命が長くなっており、一家の大黒柱と言えば当然男性が多いことであるのでそのような傾向は出ることでしょう。

③「若年性認知症」は、若年性脳梗塞が増加していることからみて、高齢者特有のアルツハイマー病型認知症ではなく、「血管性認知症」であるということがわかります。

サラリーマンの場合は、定年を迎える前に発症することで経済的な問題が発生するのは自明で、それを支える配偶者の人的負担の増加が大きな問題となりますので、若年性認知症の予防は必須でしょう。また、「疲れから来るものだろう」「一時的なものだろう」といったなかなかその症状から発見が遅れる傾向があるのが危惧されます。

 

【原因】

脳梗塞などが原因で脳の血管が詰まり脳へ酸素が運ばれず、その結果神経細胞や神経線維が壊れることが原因といわれています。また、脳卒中の別のタイプである「脳出血」の後遺症として血管性認知症になることもあります。
そのほか、海馬、視床、角回など、「記憶」に関係する部位への血管が破綻して発症するケースもあります。心停止や呼吸不全などによる脳虚血が原因となることもあります。
また、直接的な原因ではありませんが、血管性認知症を招く危険因子もあります。それは、脳血管障害(脳梗塞・脳出血・くも膜下出血)の危険因子と同じく、高血圧、脂質異常症、糖尿病、高尿酸血症、心房細動などの不整脈。
さらに悪影響を与える生活習慣として、喫煙、過度の飲酒、肥満、ビタミン・ミネラルなど必要な栄養素の不足、バランスの悪い食事、運動不足、ストレス、放射線、大気汚染物質。遺伝的素因など。

上のように枝葉を説明し始めたらキリがありませんし、ポイントが何かわからなくなってしまいます。

結局のところ、「血管性認知症」の要因は脳梗塞や脳出血といった脳血管障害で、脳血管になんらかの障害が起き周辺の神経細胞に影響が現れます。大きな脳梗塞や脳出血で認知症が急激に発症するケースだけでなく、小さな脳血管障害の繰り返しで認知症が徐々に進行するケースもあります。また、その脳細胞の部位により発現(症状)が違ってきます。
脳血管障害のリスクを高める高血圧や糖尿病、脂質異常症などが「血管性認知症」の原因に繋がりやすく、ストレスや喫煙、肥満を招く食生活、大量の飲酒といった生活習慣も警戒すべき要素です。

 

現代人のライフスタイルは、便利さとは裏腹に必ずしもQOLが高まったとは言えず、目に見えないところからジワリと忍び寄ってきます。前日まで元気だった人が翌日に亡くなるというパターンは、「脳」か「心臓」に問題が起ってしまうのが圧倒的です。いわゆる血栓が詰まる「若年性脳梗塞」又は、心筋梗塞です。つい最近でも、韓国の有名な漫画家(47歳)、アメリカの元WWE女性レスラー(30歳)が急逝しています。

現代人にとってこのようなことが起らないように予防する習慣は必須であり、自分はもとより大切な家族や周りの人へ多大な負担をかけないことに繋がります。

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